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2008-10-01

お化粧ごっこ

二宮さんは以前住んでいた借家での出来事を話してくれた。
夫と別れたばかりの二宮さんは、即日入居可能な物件を探していた。
「結構古い家だったんだけど、パート先から近いし、なにより家賃がすっごい安くて。一応、養育費って事で毎月5万振り込まれるようになってたんだけど、なにがあるか分かんないでしょ?」
その借家は、築50年以上は経っているようにみえた。
「部屋が4つと台所。二人で住むには広すぎるかと思ったんだけど、ひとつひとつの部屋はけっこう狭くって、、4畳半くらいだったかな」
息子との二人だけの生活が始まった。
昼のパートに加え、夜も知り合いのラウンジで働くようになった二宮さんは、5歳になる息子に構ってられないほど時間に追われるようになったという。
「もう、まともに相手できるのは昼のパートが終わってからの2時間くらい。コウタには、かわいそうだったけど、、」
そのわずかな時間でさえ、洗濯やご飯の用意におわれて邪険にしてしまいがちだった。
「忙しくって、引っ越しの荷物だってまだちゃんと片付けてなかったし、私も余裕がなかったんだと思う」
引っ越して3ヶ月ほどして、コウタくんが妙な事を言うようになった。
<家の中に知らない人がいる>そう言って押し入れを指差したり、天井をじっと凝視したまま怯えるようになったという。
「私が、あんまりかまってあげないもんだから、気を惹こうとしてるんだと思ってました」
数日おかしな行動が続いたが、すぐに収まった。
しばらくして、二宮さんは風邪をひいて寝込んでしまった時があった。
「ひさしぶりにたっぷり寝ました。無理してるのは分かってたし、まぁ、よかったかなって」
その日、目が覚めると昼すぎだった。
ふだん相手できない埋め合わせに、思いっきり甘えさせてあげようと思い、コウタくんを探した。
「いくら呼んでも返事しないの。かってに出て行くわけないし」
ふらふらする足取りで他の部屋を探したという。
コウタくんは化粧台の前に座っていた。
「でも、様子がおかしいの。私の声が聞こえてないみたいで、、」
近づくと口紅をもっているのが見えた。
「コウタ?何してるの?だめでしょ、勝手にママの使っちゃ」
コウタくんは化粧をしていた。
振り返った顔にはでたらめに口紅が塗られており、定まらない視線で空をあおいでいる。
「コウタ!」
呼びかけるも反応がなかった。
コウタくんは、ふたたび鏡へ向き直ると、鏡の中の自分に話しはじめた。
「ママ、家の中に知らない人がいるよ?」
声を上げる事も出来なかったという。


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theme : ホラー・怪談
genre : 小説・文学

tag : 怖い話 ホラー

2008-09-22

あかずの間

千加子さんは去年の夏、彼と行った旅館での話をしてくれた。
「すごい大雨になって、予約してた旅館までの道が通行止めになっちゃったんです」
仕方なく引き返し、途中にあった古い旅館へ入ったという。
「でも満室だったんです。外は土砂降りだし、大雨警報とか出ちゃってて、どうしようかって話してたら、、」
奥から女将さんがでてきた。渋々といった感じで、普段は使ってない部屋があるからそこでも良ければと案内してくれた。
「全然きれいな部屋だったんですよ。なんで使ってないのか不思議なくらい。でも、、」
空気が重いのだという。
純和風のきれいな部屋。
まるでこの部屋だけ時間が止まっているように感じた。
「彼も何か感じてたみたいだけど、二人とも疲れてたからさっさと寝ちゃった」

夜中、何かの気配に目が覚めた。
体は動かなかった。
<やだ、金縛り!?>
目だけで部屋の中を見回した。
押し入れの襖が20センチほど開いていた。
奥にぼんやりと何かが見えた。
次第に目が暗闇になれてくる。

男と目が合った。

やせこけた顔に眼球だけがやけに大きく、じーっとこちらを見ていた。
「あ、やばいって思った」
千加子さんはすぐに目を閉じ、気づいていない振りをした。

しばらくすると、耳鳴りがしはじめた。
恐怖に耐えかねた千加子さんは、隣の彼を起こそうと横をみた。

目の前に男の顔があった。
枕元から覗き込むように、腰を曲げて。
耳鳴りだと思っていた音は、男の声だった。
千加子さんの目をじーっと見つめ、無表情のまま口だけを動かして何かを訴えている。
そこで千加子さんは気を失った。

次の日、女将さんに昨晩のことを話すと、宿泊料はいらないから、黙っていてほしいと言われた。
その後、その旅館には行っていない。

theme : ホラー・怪談
genre : 小説・文学

tag : ホラー 怖い話

2008-09-21

306号室

「去年の話です」
沢田さんは以前、住んでいたマンションでの話をしてくれた。
その日は、会社が休みだった。
沢田さんはお昼近くまで、テレビをつけてだらだらしていると刑事が訪ねてきた。
彼女の隣の住人が首をつって死んでいたという。
なにか気づいた事はなかったかと聞かれた。
「全然。だって、私顔も見た事なかったんですよ」
刑事の話によると、妙なメッセージのような物が残されており、困惑しているとのことだった。
「カーテンにね、306って、びっしり赤い字で書かれてたんです」
彼女の部屋は306号室だった。
「もう、すっごい気味が悪かった。そんなの、まるで私の部屋に何かあるみたいじゃないですか」
刑事は念のため部屋の中を確認させてほしいと言い、彼女の部屋に何もない事を確認すると、何かあればと名刺をおいて帰っていった。
「なんか疑われてるみたいで、いい気がしなかったですよ。けっきょくただの自殺ってことで処理されたみたいなんですけど、」

その日から部屋に帰るのが嫌になった。
「出来る事ならあんな縁起の悪い所、さっさと引っ越したかったんだけど、お金なかったし、、」
普段は気にならなかった物音に敏感になった。
「ピシッ、ピシってきしむような音。小さい音だったんだけど、なんだか、、、」
誰か、部屋の中に入ってきているように感じたという。

ある晩、ベットに入っているとリビングからの大きな音に目が覚めた。
「ゴトン!バサバサって、何か落ちたような音。ちょうどトイレにも行きたかったし、私、確かめにいったんです。」
寝室を出て、廊下の電気をつけた。
急な明かりにまぶしさを感じつつ、リビングのドアを開くとひんやりとした空気が漏れてきた。
廊下の照明がリビングをうっすらと照らしており、中の様子が見えた。
「何もなかったんです」
誰かいるのかも、という思いが頭をよぎったが、中に入ってまで確認する気にはなれなかった。
「まぁ、いいやって思って、トイレに入ったんです」

用を済まして便座から立ち上がろうとすると、ぎぃぃ、、とドアの開く音が聞こえた。
リビングの方からだった。
沢田さんは固まった。
トスッ、、、トスッ、、、とゆっくりと歩く音が近づいてくる。
(やだ!やっぱり誰か居たんだ!)
急いで鍵をかけ、ドアノブを握りしめた。
足音がトイレの前でとまった。

「ごめんなさい」
ドス
「ごめんなさい」
ドス

女がドアに体をぶつけているようだった。
なぜ謝られているのか、わけが分からなかった。

沢田さんは恐怖に耐えきれなくなり、目を閉じた。
両手がしびれるほど、固くドアノブをおさえ続けた。

どれくらいたったのか、気がつくと声はしなくなっていた。

結局あさまでトイレに閉じこもっていたという。
後日、警察にありのままを話したが、相手にされなかった。
それからすぐにマンションを引き払い、現在は実家から通っている。

theme : ホラー・怪談
genre : 小説・文学

tag : ホラー 怖い話

2008-09-20

髪人形

あらかじめお断りしておきますが、この話を聞いた事でのちに不都合な事があなたの身に起きたとしても、一切責任を負えません。どうか、自己責任で聞いてください。

私が高校3年生だった頃、仲の良かったグループの一人が死にました。表向きは、精神疾患による自殺とされていましたが、実際は違います。あいつに呪い殺されたんです。
もう忘れてしまいたい過去なのですが、皆さんにお話しする事で、少しでも私の恐怖心が薄まればと思い、お話しします。

私とA,B,Cの4人はいわゆるヤンキーで、中学のサッカー部時代から一緒でした。高校に入り、そのままサッカー部に入ろうかと思っていたのですが、見学に行ったときにあまりにも厳しそうだったので高校では部活に入らず、地元の社会人がやっている草サッカーのチームに遊びがてら入っていました。このチームの中の一人に町内にあるお寺の住職をしているひとがいて、私は今この人のおかげで生きていると思っています。

高校生活も終わりに近づいていた頃、私たちはよく学校を抜け出していました。私たちは4人とも小さな工場など、それぞれに就職が決まっており、ぬけだしても先生にとがめられるという事もありませんでした。まじめに授業を受けている生徒達の邪魔になるとでも思われていたのでしょう。

ある日、いつものように学校を抜け出し、ぶらぶらしていると、Aがいい場所を知っていると言うのです。
話を聞くと、誰も使っていない廃屋があるから、そこをたまり場にしようと言う事でした。
私たち4人はすぐにその廃屋を目指しました。

実際にいってみると、二階建ての結構大きな屋敷で、バブルの頃にたてられたような趣味の悪いシャンデリアがぶら下がっていました。みんないい所を見つけたとはしゃいでおり、すぐに屋敷の探索が始まりました。
なかなか金持ちだったらしく、家の中はデザインを重視したような作りになっていました。
2階に続く階段へと来たとき、おかしな所に気がつきました。
結構急な階段を登った先にはもちろん2階の部屋へと続くドアがついているのですが、それとは別にもう一つ、階段を5段ほど登ったあたりから上に、手を伸ばしても到底届かないような位置にドアがついているのです。
無理な増改築でもしたときに使わなくなったドアの跡が残ったのだろうかとも思いましたが、二階に上がってみるとやはりおかしいのです。二階のドアを開くとそこは一つの広いフロアになっていたのですが、ちょうど先ほどの手の届かないドアの裏あたりの壁が出っ張っており、そこにはある程度の広さの空間があるはずでした。
みんな、ドアと出っ張りの位置を確認しては、やっぱり変だと口にし、そのうちにあの壁の向こうに隠し部屋があるんじゃないかという話になってきました。
それからは、みんなで入り口探しが始まりました。
大きな本棚をずらすとすぐにそれは見つかりました。
ドアノブは針金でグルグル巻きにされており、内側から開けられないようにされていました。
明らかに隠されていた入り口。軽々しく入って行くべきではなかったのです。
針金を外すと、みんな躊躇する事なくその部屋へと入って行きました。
今思うとみんな呼び寄せられていたのかもしれません。

部屋の中はがらんとしており、中央に机が一つあるだけで、その上に写真立てとわら人形のような物が置かれていました。
「うわー、なんやこれ」
写真立ての人物は学ランを着ていたので学生だと分かったのですが、顔の部分が切り取られていて、代わりにティッシュを丸めたような物が顔の部分に詰め込まれており、赤いマジックで目が書かれていました。
「あーこれ、髪の毛や」
わら人形は髪の毛で作られていました。それが釘で机に直接打ち付けてあります。
私はよく触れるなと思いながら、感触を確かめているAを見ていましたが、何を思ったのか突然Aがその人形を机から引きはがしました。
「おい、やめとけよ」
私はだんだん怖くなってきて、もう帰りたくなっていました。
Aはじっと人形を見つめたまま動きません。
「おい、ここやばいぞ」
Bが紙切れをヒラヒラさせながら言いました。紙切れは御札でした。
よく見ると部屋の四隅に御札が貼られていました。

ギイイいいバタン!

突然ドアが閉まり部屋は真っ暗になりました。
「うわ、なんや」

ガチャガチャ
急いでドアを開けようとしましたが、強い力で押さえつけられていてびくともしません。
「あかん!閉じ込められた」
みんなパニックになりました。
「いいいいいいいいいいいいいいいいいい」
後ろからはAのうなる様な声が聞こえいます。

腰が抜けそうになりながらドアに体当たりしていると、背中から明かりが射してきました。
「こっちや!」
入り口とは反対にあるドアが開いていました。
先ほどのおかしな位置にあったドアが開いたのでした。
「はよこい、はよこい」
私たちは転がり落ちるように部屋を出ました。
ドアから階段までは3メートルくらい高さがあったと思います。
体をしこたま打ち付けましたが、それどころではありませんでした。
「おい!A」「なにしよんや!」
なかなかAが降りてきません。置いて逃げるのは気が引けたので、逃げ出したいのをぎりぎりで我慢していました。
するとAの歌うような声が聞こえてきました。

ここまで聞いていて気分の悪くなった人はこれ以上はお進めできません。
どうか自己責任でお願いします。

続きです。
Aの歌っていた声が耳から離れません。
こんな感じです。
「え~んみぃ~だぁ~ま、え~んみぃ~だぁ~ま」

私はもう限界でした。
Aの姿を確認する事なく、逃げ出しました。BとCもすぐにあとをついてきました。
「やばいて、どうするよ」
私たちはとにかくその場所から離れたくて、自転車に飛び乗ると、必死にこぎました。
「Aどうなったんやろうか」「あれ、なんか憑いとったよな」
そのとき私はサッカーチームの住職の事を思い出しました。
「そうや!天野さんとこ行こう。あのひとお坊さんやし、なんとかしてくれるかもしれん」
「ああ、そうやな、、それがええわ」
そのまま私たちは、天野さんの家に向かいました。

着いてすぐ事情を説明すると、はじめにこやかに聞いていた天野さんの顔がだんだんと厳しい物に変わっていきました。
「お前ら、えらい事してもーたな」
普段聞いた事のないような低い声でした。
「おかん、こいつら頼むわ。本堂から出さんといてくれ」
そういうと、天野さんの母親らしきおばさんに別棟へと連れて行かれました。
ついていくあいだ、天野さんの怒鳴るよう電話の声が聞こえていました。
「あかんわ、吉田さんとこ!すぐ戻ってきてや。」
「ちゃうちゃう!もう解けとる」
「ああ、せやけど、俺自身ないわ。おやじ絶対すぐきてや!」
天野さんの慌てぶりを目の当たりにし、事態は最悪に思えました。
「おふくろ、いってくるわ」
しばらくすると、車の出て行く音が聞こえました。

本堂で待っている間、おばさんに淡々と説教されましたが、なんと言われたのかは全く覚えていません。
私は緊張が解けて、泣いていたと思います。
天野さんが帰ってくるまでに私たちは3人とも丸坊主にされました。

何時間かたって、車の帰ってくる音が聞こえました。
外から、天野さんと、天野さんのお父さんらしき人の声が聞こえていましたが、話している内容は聞き取れませんでした。
しばらくして、再び車の出て行く音が聞こえたと思うと、天野さんだけが本堂に入ってきました。

「ええか、大事な事はなすけん、まじめにききや。まずAの事は忘れろ。うちの親戚がやっとる病院でとりあえず預かってもらっとるが、あれはもうダメや」
もうダメだと言われて、どういう事なのか問いただしたかったのですが、天野さんの真剣な表情をに押されて何も言えませんでした。
「それからな、おまら、もうこの町にはおられへん。出来るだけバラバラの土地に行ってな、顔を合わせんようにしとけ。あいつは自分の事を覚えとるやつの所へは何年かかっても追いかけてくるけん、とにかく今日の事は忘れるんや」
話している間、おばさんが私たちの切り取った髪の毛でわら人形を作っていたのを覚えています。
「こっちでも、出来るだけの事はしてみるけん。急な話やけどな、なにより遠くに逃げるんが確実なんや」
私は、どの辺りまではなれればいいのか、親とも離れなければいけないのか、などといったことをボーとする頭で考えていました。

「あいつ最後逃げるとき、変な歌みたいなもん歌っとった」
Bがつぶやきました。
私ははっきりと覚えていましたし、なにか解決の糸口になればと思い再現してみせました。
「俺覚えとる。えんみーだーま。えんみーだーま」
「やめろ!」
急に怒鳴られて、固まってしまいました。おばさんも人形をつくる手が止まっていたと思います。
「それは歌やない。お前らにしるしを付けるまじないや。二度と口に出すな、頭ん中で思い出すんもいかん。とにかくわすれるんや!」
僕らが顔を合わせたのはその日が最後でした。

あれから7年がすぎ、私は青森に住んでいました。出来るだけ思い出さないように、ただ一日一日を過ごしていく、それだけでした。
Aはあれからすぐに死んだと聞かされました。B、Cともずっと連絡を取っていません。
7年という年月が、私を油断させたのでしょうか。墓参りぐらい行ってやらねばと思い、久しぶりに地元へ帰ってきました。
Aの実家へ訪ねていくとそこは売り家になっていました。あてが外れてしまい、仕方がないので怒られるかもと思いましたが、天野さんの家を訪ねる事にしました。しかし、そこにも立ち入り禁止の札が立っており、住んでいる気配がありませんでした。
近所の人にどういう事なのか聞いてみると、僕らが町を出てすぐ、家族間のトラブルでお互いに殺し合いになったそうです。
地元では大きなニュースとして取り上げられていたとの事でした。とても仲の良い家族だったのに、、と近所の人は感慨深げに話していましたが、
私には信じられませんでした。
あいつが来たとしか思えません。

あれからまた引越しをして、今は別の県にいます。どこにいるのかは言えませんが、最近あの歌がよく頭に浮かぶんです。BとCは元気にしているのでしょうか?私はどうしたらいいのでしょう?誰にも話してはいけないと言われていたのですが、あの歌を皆さんに聞いていただければあいつが私を捜しにくくなるのではないのかと思い、お話ししました。申し訳ありません。あの歌を覚えている方の所へはあいつが来る可能性があります。
本当にごめんなさい。ですが、可能性を下げる事は出来ます。出来るだけ多くの人にあの歌を聴かせるのです。そうすれば他の所へいく可能性が増えますので。よーく覚えておいてください。えんみーだーま。えんみーだーま。

theme : ホラー・怪談
genre : 小説・文学

tag : 怖い話 ホラー

2008-09-19

蚊取り線香

私の大学時代、ぼろアパートに住んでいた頃の話です。ちょうどお盆をすぎた頃で、その日は花火大会。私は行かなかったんですが、友人二人が行っていて、終わったらうちに遊びにくる事になっていました。

花火大会は9時で終わりのはずだったんですが、なかなか二人がやってきません。渋滞にでも巻き込まれているのだろうと思い、私はテレビゲームをしながらだらだらと待っていました。結局二人が来たのは11時近くになってからでした。

「悪い悪い、とちゅうで一人増えちゃってさ」
二人の後に続いて白いワンピースの女性が入ってきました。
「え、だれ?」
「彼女はタエちゃん。なんか俺たちすごい気が合ってさ、構わないだろ?」
聞くと、帰りに車で走っていた所、一人で歩いていたのでナンパしたとの事でした。
そんなナンパについてくるような派手な子ではなかったので、意外に思いましたが、まあ、女の子がいるだけでむさ苦しさがやわらぐようなきがして、ついつい招き入れてしまいました。

当時流行っていた格闘ゲームで競い合う、というのがうちに来てからのいつもの流れだったのですが、二人は女の子と話すのに夢中でゲームなんかほったらかしです。仕方がないので私は、はしゃぐ二人を横目に一人でコンピューター相手に遊んでいました。

いくつかのキャラでラスボスを倒した所で三人の方を見ると未だにわいわいとやっていました。しかし、ちょっと様子がおかしいのです。女性を囲むように男二人がずっとしゃべっているのですが、女の子はひと言も発していません。なのに会話が成立しているのです。例えば、どんな映画が好きなの?という男の質問に、女の子は何も答えない。へ~!渋いね!!ともう一人の男が相づちをうつ、そんな感じでした。
ただ、その子は二人の顔をかわるがわるじーと見つめていました。

その事に気づいてから背筋がぞっとするのを感じました。思い返せば彼女は部屋に来てから何も話していないのです。なぜこんな不自然な事に気がつかなかったのか、自分でも分かりませんでした。彼女の顔は青白く、生きている感じがしませんでした。
あーヤバいな、、そう感じた私は部屋をでました。
「俺、ちょっとジュース買ってくるわ」
携帯を片手にアパートの前の自動販売機へと向かいました。

プルルルルル

「もしもし?卓也?」
「おう、どうした?」
「いきなりなんだけどさ、お前、幽霊とか詳しかったよな?」
卓也って言うのは同じ大学の同級生でオカルト研究会の部長をやっていました。
「ああ、まあ、、で、なんかあったのか?」
私は一通り事情を説明しました。
「んー、、その女どこで拾ったって?」
「いや、詳しくは聞いてない。ただ道を歩いてた所をナンパしたって、、」
「そうか、、あっ!ちょっとさ、お前アビラウンケンソワカって言ってみ?」
「え、なんで?」
「いいから、ア•ビ•ラ•ウ•ン•ケ•ン•ソ•ワ•カ!」
「ええー、っと、アビラウンケンソワカ。これでいいか?」
「ok。じゃあさ、その女の顔ってどんなだった」
「女の顔?えーっと、、あれ、、どんなだったっけ?あっれ~、思い出せない」
「あーやっぱり。ダメだわ、その女。今のは本来あるべき姿に戻れっておまじないなんだけど、お前もちょっと危なかったぞ。とにかくその女、部屋から追い出せ」
「追い出せったって、どうやって!?おまえちょっとうちまで来てくれよ」
「それは無理。俺今実家帰ってるし」
「マジかよ、、」
「あ~一つあったわ。お前んち線香ある?」
「いや、ない。蚊取り線香ならあるけど」
「ああ、、それでいいよ。部屋に戻ってなガンガンに蚊取り線香焚いてみ。部屋が曇るくらい。多分それでもとの場所に帰るはずだから」
彼が言うにはその女は地縛霊で本来はその場所を動けないはずなのに私の友人が連れて来た、とのことでした。
「それから、部屋に帰っても女の顔は見るなよ。お前も取り付かれちまうからな」
さいごにダメだったらとにかく逃げろ、と言い残して電話は切れました。

わたしはやるべき事を頭でシュミレートしながら部屋に戻りました。

部屋に帰ると彼らはまだわいわいと騒いでいました。横を通っても私に見向きもしません。
言われたとおり、すぐに蚊取り線香を炊きました。お皿に取り分けて5本。
1kの私の部屋はすぐに煙でいっぱいになりました。だんだんと息苦しくなってきて友人二人が咳き込み始めたと思うと、スッと女が立ち上がりました。そのときつい女の顔を見てしまったのですが、すごい形相でにらみつけていました。

そのまま女は部屋を出て行きました。
「あれ、タエちゃん。帰っちゃったよ。早く追いかけようぜ」
いまだ正気に戻らない二人を私は思いっきりひっぱたきました。
「おい!おまえら。自分の顔、鏡でみてみろ!」
彼らの顔にははっきりとしたクマが浮かんでおり、顔全体がどす黒くなっていました。
「なんだ、この顔!」
「うえー、これ、誰だよ」
二人は鏡を見てあまりの変貌に驚き、やっと正気に戻りました。
「だめだ、気分悪い」
そのまま二人はぐったりして倒れるように眠ってしまいました。
次の日の昼すぎ、ようやく目を覚ましたときには元の顔色に戻っていたので安心しました。

話はこれで終わりです。
もうだいぶ昔の事なのですが、思い返すと今でもあの時の恐怖がよみがえってきます。
もしあのまま彼女が居座り続けていたらどうなっていたのでしょうか?
みなさんも、知らない人を部屋に招く時は一つ疑いを持つ事をオススメします。

theme : ホラー・怪談
genre : 小説・文学

tag : ホラー 怖い話

プロフィール

紋白蝶

Author:紋白蝶
香川県在住の妄想家です。
趣味は読書、ゲームなど。
日々人間の恐怖を探求中、
たぶん普通の人です(汗)
感想聞かせて下さいませ。

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