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2008-10-21

ねずみ男

「私のとこ、ほとんど学生しか住んでいないから、おかしいなって思ったんです」
マヤさんは大学から歩いて5分ほどのマンションに住んでいた。
「私、3年まででほとんど単位とってたから、」
四回生になると、大学の授業は午前中で終わり、昼過ぎには帰ってくる事が多くなったという。

ある日、学校から帰ってくるとマンションのエレベータへ駆け込んできた男がいた。
「40歳くらいに見えました。表情が分からない位ひげがいっぱいで、」
男は毛玉だらけのトレーナーを着ていた。
エレベータの中に赤身魚の様なねっとりとした臭いが広がったという。
「私の部屋7階なんです。階段なんて使ってなかったし、、」
マヤさんは身を固くしてエレベータが開くのを待った。
男が話しかけてきた。
「あー、すいません。高木さんのお友達ですか?」
男の視点はマヤさんの左上に固定されたままで、顔を見ずに会話する姿が気持ち悪かった。
「高木さんって言われても、どの高木さんだか分かんないし」
マヤさんは[いいえ]とだけ答えたという。

7階になりエレベータが開くと、マヤさんは急いで歩き出した。
男が後を付いてきていた。
「私の事、付けてきてたらどうしよう?って焦りました」
マヤさんは自分の部屋を通り過ぎると携帯を取り出した。
「もしもし、アケミ?、、あっ、ごめ~ん!すぐ取りに行くから、ちょっと待ってて、、」
忘れ物をした振りをして引き返し、小走りで男の脇を避けるようにすり抜けた。
扉の閉まるエレベータの中から、男がマヤさんの部屋の前で立っているのが見えた。
「その人、私の部屋のドアスコープを覗き込んでるんです」
マヤさんは友人に事情を話し避難させてもらうことにした。

1時間ほどして、友人に付いて来てもらい自分の部屋へ帰る事にした。
部屋の前に男の姿は無かったが、ドアノブにスーパーのレジ袋がぶら下がっていた。
「キウイかな?って思ったら、」
たくさんのネズミが入っていた。
レジ袋の中でもぞもぞと動くネズミ達は、弱っているようではあったが死んではいなかった。
あの男の仕業だとおもったマヤさんはすぐに警察へ電話をしたという。

一週間後、部屋の外が騒がしいと感じていると刑事が尋ねてきた。
マヤさんの隣の部屋で捜索願の出ていた女性の死体が見つかったのだという。
「刑事さんに確認してもらいたい物があるっていわれて、」
隣の部屋から死体と一緒にマヤさんの服や下着、郵便物が出てきたのだという。
死亡していた女性は3年以上監禁されていた。
発見された時には腐敗が始まっており、部屋から大量のネズミがでてきた。
女性の名前は高木めぐみ。
同じ大学の卒業生だった。
犯人は逃走中なのだという。

後日、高木さんはマンションを出て大学へは実家から通うようにした。
「電車で2時間くらいですけどね。週に1日行けば卒業の単位は確保できたし。単位とっててよかったですよ」
就職先は実家の近くで探す予定なのだそうだ。



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2008-10-21

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Author:紋白蝶
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